膨大なデータを”料理”するデータサイエンティストという仕事。浅野礼子氏が語るキャリア観とは。【6/27(木) イベントレポート #1】

2019年6月27日、渋谷ソラスタコンファレンスでESTYLE AI LOUNGE主催のもと「【ESTYLE AI LOUNGE】データアナリスト・機械学習エンジニアの実情とAIキャリアの築き方」が開催されました。

イベントではデータアナリストの浅野礼子氏(株式会社ドコモ・インサイトマーケティング)、u++氏、機械学習エンジニアのばんくし氏に、自身の経験や今後のAI人材のキャリアについてお話いただきました。

本記事では浅野礼子氏が登壇。自身のキャリアと現状の業務、そして今後のデータ活用について発表しました。

目次

突然始まった、データアナリストとしてのキャリア

浅野礼子氏(以下、浅野):みなさん、こんばんは。浅野礼子です。私はドコモに新卒で入りまして、その後、採用担当や法人営業を担当してきました。

で、ドコモ・インサイトマーケティングと言う会社が立ち上がり、データをお客様にコンサルしながら売っていくと言う仕事をしてみないかと、その当時の上司に呼ばれまして「ぜひ」と言う形で、突然データアナリストとしてのキャリアが始まりました。

私は転職をしたことがないので、ここからはAIのキャリアを築いていくというような話ではなく、データアナリストとしての一働き方というか、一サンプルとして、今日は皆様にお話しさしていただければと思います。

毎日100GBのデータを2013年から収集

私が取り扱っているのはモバイル空間統計というデータになりますので、まずそれについて簡単に説明させていただければと思います。モバイル空間統計というのはみなさんがお持ちのスマホやガラケーが基地局に対して飛ばす信号を活用したデータになります。

端末は必ず1時間に一回、基地局に信号をあげていて、これによってどの端末が日本全国どこにいるのかというのが正確に把握できています。これは外国人も同様で、ローミングで入国してきた端末の国番号がわかり、これによって例えば、アメリカの携帯が一台日本に入国してきたということが把握できるわけです。

日本人は7800万サンプル、外国人は昨年日本に入国した3000万人のうち900万のサンプルを持っています。これはものすごいデータ量でして、数字に置き換えると毎日100GBのデータが溜まり続けています。しかもこれは2013年からずっと蓄積をしているものになります。

膨大なデータをいかに”料理”するか

わたしの仕事はこの膨大なデータをどう料理してお客様にご提供していくか、ということをしています。いろんな文脈でご活用いただいているのですが、観光系とか、新規出店どこに打とうか、なんて使い方が多いですね。

先ほどお伝えしましたがモバイル空間統計というのは1日に100GBのデータが溜まっておりますので、ある程度仮説を持ってデータを見に行かないと埋もれてしまいます。よって私たちはよくNRI(Nomura Research Institute)の鈴木さんがおっしゃっている「DIVAのフレーム」に当てはめて考えています。

モバイル空間統計というデータがあって、それにどうやって価値を見出し、お金に変えていくのか。このフレームに沿って考え、私はこの解釈とか分析の所をメインにやらせていただいています。

観光、インバウンド、防災に活用可能なモバイル空間統計

実際にデータの例として、平日は東京都”外”から東京都に対して毎日200万人が流入してきます。新宿の歌舞伎町は休日でも朝の4時ぐらいまでずっと人が滞在していて、全く眠らない街ってのがわかると思います。他にも丸の内には平日だと全方位的に入ってきますけども、休日は近場の人しか動いていません。

さらに訪日外国人ですね。今、インバウンドで3000万人以上入国していますけれども、この人たちの動態もわかります。これで示しているのは成田空港から入国する外国人の初日にいる場所を示しています。

これ1日目2日目3日目って今から動かしていきますと、「ゴールデンルート」って観光の文脈で使われるように、東京から大阪に動いていく様子がすべてわかります。

外国人の国籍によって違いますので、韓国の人は大都市しか回らないという傾向があったり、中国の人は金沢や富士山とか、細かく回っていることがわかります。わかりやすく観光スポットで比べてみますと、清水寺に来ている外国人だと韓国、中国、台湾などアジア系の方が非常に多くいらっしゃいますが、龍安寺のエリアに行くとアメリカ、スペイン、フランス、イタリア、ロシア、カナダが多かったりします。同じ京都でも場所が違うだけで来ている外国人の国籍が全く違います。こういったことが分かるデータですね。

モバイル空間統計のさらなる活用

モバイル空間統計はこの下期からリアルタイム化する予定です。今はデータを取得するのに早くても2営業日かかってしまうのですが、これからは1時間後とかにこのデータ見ていただけるようになるので、例えば人の流れからリアルタイムに商品や交通手段のプライシングを変えていただけるようになります。

これがどう活用されるのかというと、オリンピック、パラリンピックですよね。わたし自身はチケットの抽選が全て外れてしまったのですが…笑。それはさておき、これはクラブワールドカップ2015年のサッカーのイベントの時に外国人がどう動いたかという分析している事例になります。

アルゼンチンの方々って通常は数百人程度しか日本に入国してこないんですが、この12月は普段に比べて10倍の8500人ほどが入国しています。この人たちがどこに行くのかというと、決勝が行われる横浜以外にも東京とかディズニーランドとかに移動しています。

さらに、近畿圏を見ていくと大阪のヤンマースタジアム⻑居で準決勝をやっていて、横浜の決勝を見てる人のうち42%の人は準決勝も見ているんです。先ほどの「ゴールデンルート」を使って大阪から東京まで移動していることがこれでわかりますね。

さらにこの人たちは通常の外国人よりも⻑期的に滞在してくれます。よって決勝戦のある横浜だけでなく周辺のエリアにも足が伸び、お金が落ちていることが想定されます。このようなデータを全国の自治体さんなどへ見ていただき、オリンピック・パラリンピックでもこれだけ周辺エリアに来ていただけるポテンシャルがありますよっていうお話をさせていただいております。

災害対策から出店計画、小売り、流通様がお持ちのPOSデータとの連携などがあります。最近リリースを出したものだと、野村證券出身のアナリストの方々が立ち上げたスタートアップとの連携があります。モバイル空間統計を使って企業の売上予想を立て、投資家さんへの情報提供を行うサービスです。これからもいろいろな企業と連携していきたいと考えてますし、皆さんもアイデア等あればぜひ教えてください!

ということで、以上で私の発表は終わります。ありがとうございました!

(会場拍手)

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